目の前にゴロンと横たわる他人の人生に少なからぬ興味がある。
終わってしまった時間の束を、私は適当にかいつまんで自分のなかに招き入れることが出来る。しかしながら、まるで死体を解剖するようにして、出来事を発見していくことに私は魅力を感じない。むしろそうした時間を、ただ「気に留め」て眺め、自分の見たいものではなく、自分の見たものに似たものについて語りたいと思う。「感動」への「応答」が作品と呼ばれるものを形づくるのだとすれば、私は他者とのあいだで思考することが出来るのではないだろうか。なにかを「利用」することはとてもたやすい。自分好みのかたちにかえて、それらしい骨格をつくりあげていくこと、とどのつまり、自分の側にはじめから用意されていたものを取り出すことはとてもたやすい。それは「先においてあった言葉」ではなく「昔おいた言葉」だ。いつかもう自ら虫ピンをさしていた言葉だ。伝えるために細かな「言葉」をさがして、文節していくことは別に悪いことではない。だが、それは唯一の正しい方法でもない。あくまでひとつの方法なのであって、ものによってはまったく機能しなくなることもある。

出来ることならたとえそれが死者であっても、私が一方的に受け取り続けるのではなく、会話をするようにしてその時間に接することを心がけたいと思う。つまり「物語」は私と何者かのあいだに置かれた話の種にすぎない。重要なのはそれを語る所作とリズムと表情、つまりはその周辺にある一見他愛もないものどもだ。私は知ることよりも生きることの方に興味がある、と言えばいいのだろうか。物語を知ることはたやすい。だがそこに近づいていくのは、なぜだか難儀なものだ。
いや、理由ははっきりしている。要するに、会話をするということは、自分の人生をしっかりと差し出さなければいけないということだ。それは自分と他者のあいだに設けられた、それぞれの時間の交差する溜まり場。連続する時間のなかにポツンとうまれた、自分とは別の軸をもつ記憶、ほつれることで絡まりあう歪みが堆積した、流れの遅い一種の溜まり場だ。私自身について言えば、それが写真にほかならない。墓場や本のように時間の結び目のような場所を志向しながら、私は「あいだ」の場所として写真を考えている。

それは「可能性と不可能性のあいだ」でもあるのだ。たとえば「明日の長さは?」という問いに対して、「永遠と一日」と答えることは至極まっとうなことに思える。私がかつて見てきた過去の総体が私をつくりあげているとして、それに属さないあらゆる総体をその意味において未来と呼ぶならば、「一日」の側には多くの他者の過去までも含み込まれていることになる。それは物語と呼ばれたり、記憶と呼ばれたりするものだが、我々をゆるがす「別の真実」として、他者は未来からやってくるのだ。しかしながらそうした衝撃を「私の真実」にまで細かく分節してから口に運ぶことで、我々は安心におおわれた世界においてそれを飼いならすことができる。それが「永遠」のこやしになる。
だがしかし、「永遠」の側では、そうした他者の死体のようなものがうろつくばかり。私はその死体の総体にすぎない。それでだろうか、まるで幽霊のごとく、レモンの濃密な接触点に、生と死を熱として需要してしまったりもする。
私は少しでも「一日」の側、その接触点に近づきたいと思う。そこで思考したいと思う。招き入れるのでもなく、飼いならすのでもなく、どうにしかして世界の潜在性、つまり可能性の側により近い場所へ会話を放り込みたい。そこへ「応答」を還したいのだ。

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鈴木諒一
contact : ryoichisuzuki196@gmail.com

1988 静岡市うまれ
2011 多摩美術大学芸術学科卒業
2013 東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修了

グループ展・フェア
2009
『Pre-sense』Mott Gallery(東京)   
『TAMA VIVANTⅡ 2009』
多摩美術大学(東京)みなとみらい(横浜)

2011
『Artexpo New York 2011』 Pier94 (ニューヨーク)
『もうひとつのトビラ2011 尾久発01』北井画廊(東京)
『UZNAOMOM企画展』 UZNAOMOM(東京)
Atlas2011』 東京藝術大学取手校地(茨城)

2012
EMON Portfolio Review 第1回グランプリ受賞展「郵便機」
エモン・フォトギャラリー(東京)
Guimarães noc noc 2』 ギマランイス(ポルトガル)

2013
第61回東京藝術大学卒業・修了作品展
東京藝術大学上野校地(東京)

2014
『Young Art Taipei 2014』Regent Taipei (台北)
『Artist Book 旅をよむ』アキバタマビ21(東京)


個展
2013
観光』 エモン・フォトギャラリー(東京)
リバー・フィールド』 artdish(東京)


2014
『圏内』undo(東京)

受賞
第5回東野芳明記念・芸術学科優秀卒業論文賞
第1回 EMON PORTFOLIO REVIEW グランプリ

掲載情報

『GINZA 2017年1月号』(別冊付録「FORTUNE GUIDE 2017 人生に迷ったら、仏様に会いに行ってみない?」P10-P16)の撮影を担当しました。

『GINZA 2017年1月号』





WEBマガジン『SEKAI テレビドラマを研究する?〜日常とリンクした”生モノ”の魅力〜 演劇・テレビドラマ研究家・岡室美奈子さん』の撮影を担当しました。

『SEKAI』





『GINZA 2016年12月号』(「TOM FORD 触れる者すべてを魅了する、香りとカラーの深淵」P204-P207)の撮影を担当しました。

『GINZA 2016年12月号』